2月26日開催:『第8回SDGs勉強会~~豊かな社会にとって大切なこと』のご報告

活動報告 226日開催:「第8SDGs勉強会~豊かな社会にとって大切なこと」

 

◆参加人数:15

 

◆ドネーション額:25.106

(11回種を蒔く人のお話を聴く会のドネーションと合わせて)

・国際環境NGO350 Japan様へお送り致します。

 

◆参加者の皆さんのお声(アンケートから「気づき」「学び」などを抜粋)

・普段の暮らしを考えて振り返ったときに、自分の生活が誰かの脅威になっていないか、また公的に組織やシステムを整えた上で豊かな暮らしが成り立つのだと知って、改めて個人個々が自覚をもっていろいろな物事を選択することが大切なのだと思いました。

・本当に必要なものが大切にされているとは限らない今の社会にいても、自分の生活においても、見つめ直すことが必要だと思いました。

Needs, Wants、そして人間は何のために生まれて、何のためにいきているのだろうか、少し考えてしまいました。

・ワークがすごく楽しかったです。自分の今の価値観や生活スタイルを改めて見直す機会になりました。

I learned the value of simple living. Prioritize what is ‘Needs’.

・楽しいワークでした。他のチームの必需品になるほどと感心しました。

・子どもの習い事の送り迎えできちんと話が聴けず、残念でした。無人島へ持っていくワークショップに途中まで参加しましたが、その時、頭に思い浮かべたのは、小野田實郎さんのサバイバルでした。

・どのチームも一人ひとりが楽しくワークに取り組んでおられ、自分も笑顔になりました。本当に必要なものはとてもシンプルで、多くなないのだとあらためて気づきました。

・岩崎さんが紹介してくださったアマルティア・センさんの本をまたじっくり読んでみようと思いました。

 

 

 

種を蒔くSeed folks#292 2022312

 

岩崎裕保からあなたへ

 

2月26日の「SDGs勉強会」は「豊かさについて考える」というテーマでしたが、まず「ふだんの暮しについての12の質問」を行いました。日常の暮らしの中で、どんなことに気をつけているかを考えたり見直したりするキッカケになればという思いです。(このワークは2月13日に行われた「JICA国際教育入門セミナー2022in 奈良」の講師を務めた西上寿一さんが作ってくださったものです。)

 

ふだんの暮らしについての12の質問

当てはまる項目の□にを入れましょう

1  □「やすいものをたくさん」より、「よいものを長く使う」タイプだ

2  □ 作ってくれた人の健康のことまで考えることがある

3  □ エコバッグを持って買い物に行く

4  □ マイボトルに飲み物を入れて持ち歩く

5  □ ゴミは地域のルールにしたがって、しっかりと分別している

6  □「もったいない」と思うときがある

7  □ いま世界で話題になっている環境問題をすぐに3つ言える

8  □ 衝動買いはしない。買う前に本当に必要かどうかを考えるほうだ

9  □ 家で使うものを買うときは、簡単な包装にしてもらう

10 □ 容器持ち込み可の量り売りの店を利用する

11 □ 次に使う人のことをよく考えるほうだ

12 □ 世界できびしい状況におかれている人のために何かをしたい

 

メインのワークもできるだけ参加型にしたいと思い、「無人島ゲーム~Needs and Wants」を行いました。

「豊かさ」の前提となることと言えます。

 

 

1グループ3人で、5年間無人島で暮らすという想定で、何を持っていくかを話し合って決めます。20個までと制限があります。ただし、「どこでもドア」はダメ、それに「大工道具一式」ではなく、カナヅチとかノコギリというように具体的なものとします。

行先は温暖な島で草木があり、周りは海で島内には池も川もあり、人を襲うようなどうもうな動物はいません。

島に連れていってくれる気球の運行会社から、大きな気球が準備できないので荷物を半分にしてもらいたいとの連絡があり、改めて10を選び直しました。グループごとに、その10個をホワイトボードに書き出しました。

調理をするための鍋類、ものを切るための刃物類などは、各グループ共通していました。テントや寝袋、そしてロープやタオルや靴、そのほか紙や鉛筆も出てきました。火を起こすためにマッチではなく鏡を使うグループもあれば、眼鏡のレンズというグループもありました。鶏や米と芋の種もありましたし、鍬や銃や網、そして砂糖や醤油もありました。電気通信機器から離れがたいグループもありました。

 

この持ち物をneeds(必要なもの)とwants(あるといいもの)に分けてみます。

開発学などでは、きれいな空気、安全な飲み水、食糧と調理のための道具とエネルギーそして保健医療や教育などをBasic Human Needs(BHN:生きていくうえでどうしても必要なもの)と言います。このワークでは、空気と水は確保されていますので、参加者はそれ以外のものを持っていくことを考えたハズです。

若い人たちの場合は、音楽は欠かせなかったり、友人などとのやり取りの道具は手放せなかったりすることが、けっこうあります。当日の勉強会でも、本を持っていくグループもありましたし、紙や鉛筆は生活記録用なのでしょうか… これまで行ったこのワークで一度だけ持ち物は一つでいいとした人たちがいました。薬草のことなどが分かる「植物図鑑」があれば十分だということでした。

 

さて、私たちの個人の部屋は、たぶん、needsはあまり見当たらず、wantsがあふれているのではないでしょうか。

近代社会は、needsを公的なものとして整えてきました。ですから、水道やガス・電気だけでなく、保健衛生医療も学校も、それに消防などの災害時の備えなどもあって当たり前となっています。私たちは今、電気・ガスは民間企業のものを手に入れていますが、水も民営化の動きがありますし、医療や教育の市場化も進んでいます。COVID-19禍では、このことの問題点が可視化されました。もう半世紀ほど前のことになりますが、公害が起こってまず自治体が取り組まねばならなかったのは大気汚染でした――公的なコントロールをすることで空気の質を保つことが求められたのです。

哲学者・思想家のイヴァン・イリイチは1960年代に、医療と教育と交通は市場化してはいけないということを言っていました(が、世界の潮流はそれに背いてきました)。

1998年にノーベル経済学賞受賞したアマルティア・センは『貧困の克服』(集英社新書)で、アジアの発展を論ずる際に、日本を例に、「明治時代における日本の発展初期においては、人間の潜在能力の発展が主眼とされました。たとえば、1906年から1911年にかけては、日本全国の市町村予算の43%が教育費にあてられていたわけです」と書いています。「市場メカニズムが大きな成功をおさめることができるのは、市場によって提供される機会をすべての人々が合理的に分かち合う条件が整備されている場合のみです」「発展のために何よりも最初になされるべきは、金持ちや地位の高い人々のためにではなく、むしろ貧しい人々のためになるような、人間的発展と学校教育の普及です」とも言っています。けがや病気で仕事ができなくても、治療してもらえる、その間にも必要な収入が保障されるという条件が整っていれば、安心です。

ことにこの2年間で、私たちが生きる社会は、こうしたことが満たされていない状況にあることがよく分かってきました――「自己責任」や「自助」が声高に叫ばれ、「公助」で社会を健全に穏やかに動かしていこうという姿勢がほんとうに弱くなっています。

田中世紀『やさしくない国ニッポンの政治経済学』(講談社選書メチエ)によれば、「世界人助け指数」では、日本は126ヵ国中107位、そして「世界価値観調査」で「他国の人は信頼できる」と答えた人はオランダ15.4%、アメリカ8.1%に対して、日本は0.2%だということです。また、最新の調査ではありませんが、萱野・神里『没落する文明』(集英社新書)に載っている2007年の国際的な意識調査によれば、「自力で生きていけない人たちを、国や政府は助けるべきだ」という考えに完全に同意する人の割合は、調査した34カ国のなかで日本は一番低く、15%しかありません。アメリカ28%、イギリス53%、ドイツ52%、フランス49%、インド57%、中国46%です。ほぼ同意するという人も加えると、最高はスペインの96%で、アメリカ70%、イギリス91%、ドイツ92%、フランス83%、インド92%、中国90%、韓国87%、そして日本は59%です。しかし、田中は、日本人の約6割が社会に貢献したいと潜在的には思っているのに、政治不信などの影響で利他的な行為をためらっているのではないか、もしそうだとしたら、何か社会変化が起きれば、そのためらいは消えるのではないかと指摘しています。

 

社会の変化は、一人ひとりにできる小さなことをしているだけでは、なかなか起こせません。たとえば、電源スイッチをこまめに消すことは、それなりに意味はありますが、日本の電力システムに根本的な変化を起こすことにはなりません。家庭でできるシステム変更は、電力会社を選びなおすことです。原発や火力などに頼らないで、再生可能エネルギーによって発電されているグリーン電力を選ぶことが、社会に対するメッセージになります。どのような社会で暮らしたいかというビジョンを持つことがポイントでしょう。

開発を学問として、そして実践をリードしてきたロバート・チェンバースは”Putting the Last First(最後尾の人を最前列に)”と言っています。

 

さて、伊与田さんが https://www.youtube.com/watch?v=NCqVbJwmyuo (2050年9月 天気予報) を見せてくださいましたが、以下のものにもアクセスしてみてください。

 

https://www.youtube.com/watch?v=XYgyDIDa8H02100年 未来の天気予報 夏)

 

https://www.youtube.com/watch?v=mhM50EWL29E2100年 未来の天気予報 冬)

プロフィール:blue earth green trees SDGs勉強会プロジェクトリーダー。同志社大学法学部政治学科卒業、同大学院アメリカ研究科修了。ニュージーランドが関心の地域。私立中高で英語を教え、その後大学に移って「平和研究」「国際協力論」「NGO/NPO論」などを担当。2008年から6年間開発教育協会(DEAR)代表理事。今はDEAR監事と関西NGO協議会(KNC)監事。

種を蒔く:#266,259, 254, 237, 224, 197, 175, 143, 124, 121, 98, 79, 73, 69, 67, 48