10月8日開催:『第12回SDGs勉強会~プラスチックとゴミとリサイクルについて考えてみよう』のご報告

 

 

 

 

ご参加くださった皆さま、ありがとうございます。

皆さまのご協力に感謝致します。

 

◆参加人数:13

 

◆ドネーション額:32,000円(第15回種を蒔く人のお話を聴く会のドネーションと合わせて)

・10月22日にアクセス様へ32,000円をお送り致しました。

 

◆参加者のお声(アンケートから「気づき」「学び」などを抜粋)

・プラスチックに囲まれた生活の中で改めて無責任な消費・廃棄をしていることを実感しました。リサイクルしているつもりで満足せず、もっと積極的に3RReduce, Reuse, Recycle)+3RRepair, Refuse, Rethink)を実行していきたいと思います。

・たくさんの気づきがありました。「買ってはじめて戻ってくる」ことにはハッとしました。

・プラスチックが本当にたくさんのところに使われているのを実感しました。ムダを無くして、もったいない精神で、毎日を過ごすことの大切さを感じました。

・とても深く学べてすごくおもしろかったです。やっぱり語り合えるっていいですね!

・プラスチック問題の今後に取り組むのは、個人で行うのは難しいレベルに来ていると感じました。

・プラスチックについても人々の意識改革をどうしていけば良いかといつも思うところである。マイクロプラスチックの問題もまだまだ多数の人にとって言葉は知っていても、その問題はわかっていないように思われる。ポイントはシステムづくり、その通りだと思う。授業でも取り上げていたし、これからも取り上げていきたいです。

・本当に必要な物をしっかり見極め、便利な物でも必要でなければ無駄にならないように、購入しないように気をつけたい。

・地球の許容範囲・限界を認識し、自分のことだけを考えて行動するのではなく、プラスチックゴミで苦しむ人や動物、壊される自然を心にとめて行動したい。

Reduce, Reuse, Recycleと、Refuse, Repair, Rethinkを日常生活で意識し、本当に必要な物を身の周りにおこうと思う。

・本日の学びの中で一番印象的だったことは、回収された廃棄プラスチックのリサイクルされている割合は約3(2018)だということでした。もっと割合が高いものだと思い込んでいました。

 

 

  

種を蒔く#383 20221016

 

岩崎裕保からあなたへ

 

12回 SDGs勉強会「プラスチックとリサイクル」

 

この3.2kgrのモノは何でしょう?

 

 

 

奈良公園の鹿の胃の中に残っていたものです。「鹿苑」で鹿の治療などにあたる獣医師によると「胃の中にプラごみが詰まり、胃に蓋をしてしまっている状態でした。食べ物が流れない状態です。そこにガスが大量発生し、パンパンに溜まってしまいます。それが肺を圧迫して息が止まります」「ポイ捨てされたりしたプラごみを鹿が食べてしまい、噛んで胃の中で縄のようになってしまう。そうするとそれを吐き出すことも、便にすることもできず、そのまま胃の中に残ってしまいます」とのこと。

 

 

 

 

この問題を何とかしようと取り組む動きもあり、紙袋が作られるようになりました。これは、牛乳パックの再生パルプと、鹿せんべいに使われている米ぬかで作られていて、シカが食べても消化できます。これを作った紙器製造会社の中村さんによると、奈良市観光協会や地元の信用金庫、薬品メーカーなど6つほどの団体が計約3500枚を購入したということです(202010月)。この紙袋は一般財団法人「日本食品分析センター」の検査で、食べても安全と認められています。ちなみにこの紙袋は1枚約100円、一般的なプラスチック製の袋は1枚数円程度だということです。

 

身近な奈良の鹿の問題(というよりも人間の問題)から始めて、プラスチックに関するクイズに入りました。まずは各自で答えを考えたあとで、3人一組のグループで話し合いをしました。

 

Q1. プラスチックが使われているのはどれ?

たとえば布といっても綿、麻、絹、レーヨン、ポリエステルなどがあり、特性が異なります。石油などから化学反応によって人工的に作られた「合成高分子化合物」であるプラスチックは100種類以上の素材があり、さまざまな用途・製品に利用されています。

問いにあるもの――ペットボトル、プラスチック消しゴム、スマートフォン、カップ麺・飲料カップ、マスク、ウエットティッシュ、ビニール傘、コンビニ弁当、化学繊維の服――すべてにプラスチックが使われています。

 

Q2. 世界のプラスチックの生産量は、この70年(1950~)どれくらい増えた?

1950年に年間200万トンでしたが、今や約4億トン。200倍です。人口増加をはるかに上回っています。一人ひとりの利用量が増え、とうぜん廃棄される量も増え続けています。

 

Q3. プラスチックは使い捨てされるほどたくさん使われています。その理由は?

安くて、さまざまな用途で加工しやすく、軽くて丈夫なプラスチックは暮しを便利で豊かにしてくれました。

ところが、廃棄された後にはその長所が短所になってしまいます。

安くて加工しやすい→大量生産・大量消費・大量廃棄

軽い→自然界に流出しやすい

耐水・耐熱・耐油性があって丈夫→自然分解されにくい

 

Q4. 人口1人当たりの使い捨てプラスチック容器の廃棄量の1位はアメリカです。では、2位はどこ?

世界のプラスチックごみ全体のうち、使い捨てプラスチック容器の割合は約4割です。日本の1人当たりの廃棄量は年間約32kgrと、アメリカに次いで世界2位です。3位はEU4位は中国、5位はインドです。

総量で見ると、中国、EU、アメリカ、インド、日本となります。

 

Q5. 一般的なペットボトルが自然分解されるにはどのくらいかかる?

自然界にはありえない方法で人工的に化学合成されたプラスチックは、容易には自然分解されません。

発砲スチロール製カップ:約50

ペットボトル:約400

おむつ:約400

釣り糸:約600

とされていますが、分子レベルまで生分解されるのにかかる時間は、正確には分かっていません。数百年から数千年、永久に分解されないという説もあります。

自然界に流出したプラスチックごみは小さな破片になり、5mm以下になったものを「マイクロプラスチック」と呼びます。これは、海洋生物などの体内に取り込まれ、食物連鎖を経て人間の体内にも存在すると考えられています。英国ニューカッスル大によれば、すでにわたしたちは毎週クレジットカード1枚分(約5gr)のプラスチックを取り込んでいるのだそうです。衣類から抜け落ちる化学繊維も化粧品に含まれるマイクロプラスチックで、わたしたちの身の回りに常にあります。こうしたものが人体や生物の健康にどのような影響を及ぼすかについては、まだ明らかになっていません――私たち自身が実験材料なのです。

 

次に、プラスチック・リサイクル・クイズをおこないました。進め方は一つ目と同じです。

 

Q1. プラスチックを「リサイクル」するってどんなこと?

廃プラスチックをリサイクルする方法には、①再び製品(モノ)にするマテリアル・リサイクル(再資源化)と、②油やガスなどの化学工業の原料にするケミカル・リサイクルの2種類があります。③焼却所で燃やして発電や周辺施設の暖房や温水供給などに利用することをサーマル・リカバリー(熱回収)といい、これはリサイクルではありません。

 

Q2. 2018年に日本で回収された廃プラスチックは、その後、どのように処理されたでしょう?割合を予想してみましょう。

マテリアル・リサイクル:23.3

ケミカル・リサイクル:4.4

サーマル・リカバリー:56.3

単純焼却:8.2

埋立処分:7.7

リサイクル率は27.7%、焼却率は64.5%、埋立率は7.7%で、リサイクル率は30%に至りません。かつて日本のプラスチック・リサイクル率は80%と言われていたのは、サーマル・リカバリーを含めていたのです。

リサイクル率 27.7% (EU32.5%、世界9%

焼却率    65.4% (EU42.6%、世界12%

埋立率     7.7% (EU24.9%、世界79%

焼却処理することは温室効果ガスの排出につながることから、世界的には焼却処分と埋立処分の割合を減らしてリサイクル率を高めること、そしてなにより、廃プラスチックの総量を減らすことが重要視されています。

 

Q3. 2018年に日本で回収された廃プラスチックのうち、約208万トンがプラスチック製品の原料として再利用されました。そのうち、日本国内で再利用されたのはどのくらい?

2018年には約91万トン(43.4%)が輸出され、約118万トン(56.6%)が日本国内でマテリアル・リサイクルされました。

2012年には80%以上もが輸出されていましたが、2017年に最大の輸出国だった中国が廃プラスチック類の輸入禁止を決定したことで変化が起こりました。2019年の廃プラスチックの輸出先はマレーシア、台湾、ベトナム、タイの順になっていますが、2018年以降等七時亜諸国も相次いで輸入制限を実施しています。

 

Q4. プラスチックを再び製品にすると、一般的に品質と費用はリサイクル前と比べてどうなる?

再資源化の際には、多様な素材のプラスチックが混ざることで、素材の純度が落ち、品質が劣化します。複数のプラスチック素材を利用せずに「単素材」にすることがカギなのですが、分別回収後にさらに厳密な分別が要りコストが膨大になります。再生品をつくるよりもバージン・プラスチックから製品を作る方が、かかる費用は安いのです。

また、再生プラスチックと表示があっても、100%が再生プラスチックではなく、バージン・プラスチックとの混合素材であることがほとんどです。

マテリアル・リサイクルの技術も向上していますが、いずれ廃プラスチックとなる製品の生産量を減らすこと、廃棄・再資源化のことまで考えて製品を生産することが重要です。

 

以上のアクティビティは、開発教育協会(DEAR)発行の『プラスチックごみ:開発教育アクティビティ集4』を使いました。

 

参加者の使っている机の上に載っているものの中でプラスチックが使われていないものを探してみましたが、なかなか大変でした。ハンドアウトの紙は…印刷するインクにプラスチックが入っていそうです。「BEGTのコットン・バッグは大丈夫だろう」との声がありました。

さて、リサイクルというのは、re-cycleでもう一度戻ってくるということです。私たちはスーパー店頭のリサイクル・ボックスに牛乳パックを入れてリサイクルしていると思っていないでしょうか。再生紙のティシューやトイレット・ペーパーを使っていればre-cycleになります。リサイクル・ボックスに持っていくというのは、ごみの捨て方や場所を変えているだけということです。日本社会ではリサイクルという用語が定着してはいますが、それ以前に2つのre-があります。re-ducere-useです。まずは、減らす、そして再利用する、それでも捨てなければならないものをre-cycleするのです。これを3Rといいますが、re-fuse(断る)とかre-pair(修理する)を加えて5Rとなります。そしてもう一度よく考える(re-think)ことが求められています。

 

最後に大手カフェチェーンにおけるリユース・カップの使用について参加者で考えてみました。

Greenpeaceの調査によれば、スターバックスのリユース・カップ使用率は3%、タリーズ20%、プロント31%、ドトール77%などとなっていて、9社で1日の使い捨てカップの使用は100万個でした。この4社の客の約85%が店内で飲食する際も使い捨てカップを使用していると回答しています。プラスチックや紙の使い捨てコーヒーカップは、リサイクルも困難なため、ほとんどが焼却されています。資源が浪費され、温室効果ガスが排出されているのです。使い捨てカップを使用する理由を聞いたところ、56.7%が「お店側が使い捨てカップで提供する」ことを理由に挙げています。一方で、カフェの店頭でリユース・カップだけが使われるようになっても、71%のお客さんが継続して同じカフェを利用すると回答しています。また、「使い捨てカップを減らすべき」と答えた人は8割を超え、また使い捨てカップを使用する利用客のうち約68%が店側の勧めがあればリユース・カップをもっと利用したいと考えていることが明らかになりました。もっとリユース・カップを利用するようになるきっかけについては「はじめからマグ・グラスで提供されたら」「マグ・グラスの利用に割引があったら」がそれぞれ41.3%41.7%となっています。

参加者の皆さんも同じように考えておられました。

個人の努力に期待するのではなく、システム作りがポイントなのです。

 

プロフィール:blue earth green trees SDGs勉強会プロジェクトリーダー。同志社大学法学部政治学科卒業、同大学院アメリカ研究科修了。ニュージーランドが関心の地域。私立中高で英語を教え、その後大学に移って「平和研究」「国際協力論」「NGO/NPO論」などを担当。2008年から6年間開発教育協会(DEAR)代表理事。今はDEAR顧問と関西NGO協議会(KNC)監事。

種を蒔く:#360,354,349,342,319,310,303,292, 266, 259, 254, 237, 224, 197, 175, 143, 124, 121, 98, 79, 73, 69, 67, 48

 

 

 

【過去のご報告】

2022年8月13日開催:「第11回SDGs勉強会~国際協力/援助について考えてみようⅡ」のご報告

2022年6月18日開催:「第10回SDGs勉強会~国際協力/援助について考えてみようⅠ」のご報告

2022年4月23日開催:『第9回SDGs勉強会~子どもの権利条約について考える』のご報告

2022年2月26日開催:『第8回SDGs勉強会~豊かな社会にとって大切なこと』のご報告

2021年12月11日開催:『第7回SDGs勉強会~~核(兵器)について』のご報告

2021年10月16日開催:『第6回SDGs勉強会~コンビニについて』のご報告

2021年8月28日開催:『第5回SDGs勉強会~フェアトレードⅡ』のご報告

2021年6月12日開催:第6回種を蒔く人のお話を聴く会/Listening to Seedfolks〜五ふしの草 榊原一憲さん) 』& 『第4回SDGs勉強会(フェアトレード)』のご報告

2021年2月13日開催『第4回種を蒔く人のお話を聴く会/Listening to Seedfolks〜登大路総合法律事務所 所長弁護士田中啓義さん』& 『第3回SDGs勉強会』ご報告

2020年12月26日開催:『第3回種を蒔く人のお話を聴く会/ Listening to Seedfolks 〜国連UNHCR協会芳島昭一さん』&『第2回SDGs勉強会』のご報告

2020年10月17日開催:『第1回種を蒔く人のお話を聴く会 & 第1回SDGs勉強会』のご報告